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アイアンの製法と材質の特徴を知ろう

アイアンのヘッドは鉄でできています。

その鉄にもいろんな種類があることを知っていますか?

作り方の違いや鉄の種類によって打感やボールの飛び方も変わってきます。

これを知ることでカタログを見みれば

ボールを打たなくてもどんなアイアンか把握できるようになります。

私は製造業の仕事をしてるのでこの辺の話は好きなんです。

マニアックな内容なので興味のある人は先に進んでみてください。

アイアンの製法と材質について

製法には大きく分けると作り方は3種類に分類されます

・鍛造

・鋳造

・複合型

鍛造

「軟鉄鍛造」とか「フォージド」と書いてあればこの製法の事を言います。

鍛造を英語で読むと「フォージド」と言います。

簡単に言うと

金属を叩いて製品の形を作りだす方法ことを言います。

日本刀を作るイメージしてもらえれば分かりやすいですかね。

鉄の塊を真っ赤になるくらい(1200℃程度)まで加熱して、

ハンマーで叩いて延ばしていきます。

冷めてきたらまた加熱して、叩いて延ばすを繰り返して

製品の形に仕上げていきます。

アイアンの場合は

加熱した鉄の棒を、アイアンの金型に入れ、機械でプレスして作られます。

有名なのはミズノのアイアンです。

鍛造のメリットは打感の良さと調整できること

鍛造で作られた製品のメリットは

・金属の結晶が均一にできることで打感の良さが生まれる

・硬くて柔軟性のある金属になるのでライ角、ロフト角の調整ができる

鍛造は金属を溶かさないので結晶を均一な状態で作ることができます。

叩いたり、加圧すると結晶の大きさが揃いやすくなります。

結晶が揃った金属は高音の良い音を響かせます。

打感はボールを打った時の良い音によって得られるものと言われているので、

鍛造品は打感が良いと感じるのだと思います。

また鍛造品はロフト角やライ角の調整が可能です。

自分好みに調整できるのは嬉しいですね。

デメリットは上級者向けなのが多いこと

鍛造品は金属の塊をアイアンの形にするので

形状や材質の自由度が少なく、飛びに特化したりやさしさを追求するのは不向きです。

そのため打感や操作性を重視した上級者好みのものが多くなっています。

デザインもシンプルでカッコよくプロも好んで使っていたりするので、

憧れで購入する人も多いですね。

材質は炭素鋼(軟鉄)が主流です

炭素鋼というのは鉄に炭素を含有させている物のことです。

アイアンで使われているものは主に

・S25C

・S20C

があります。

数字の「25」や「20」というのは炭素が「0.25%」「0.20%」含まれているという事です。

炭素の含有量が多いと鉄は硬くなります。

硬いともろくなるというデメリットもあるため、使う用途によって適切な材料を選択する必要があります。

アイアンの場合は硬さに加え柔軟性もあったほうが調整しやすいので上記のような材料を使われているのかなと思います。

炭素鋼にも低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼の3つの分類があります。

炭素が0.25%未満のものを低炭素鋼と呼ばれ、硬さや柔軟性から「軟鋼」「軟鉄」とも呼ばれています。

中には炭素鋼ではなく

・SS400

という材質で作られたものもあります。

これは「一般構造用圧延材」と呼ばれるもので炭素鋼とはまた違ったものです。

SS400の方が安価で柔軟性もあるため、車や建築物など工業材料としても多く使われています。

同じ鍛造品でも材質によって打感などが変わってきますので

購入を検討する時は試打してから買うようにしましょう。

鋳造

鋳造は溶かした鉄を型に流して作る製法を言います。

鋳造で作られた代表作と言えば大仏様です。

学校の教科書に大仏の作り方が書いてあったと思うのですが、

こんなに大きなものも鋳造なら作ることができます。

鋳造アイアンで有名なのはピンです。

鋳造のメリットは形状の自由度の高さ

鋳造は鉄を溶かしているので形を自由に設計できます。

飛距離重視、スイートスポットの広いもの、直進性の高いものなど

使う人の悩みを解決するクラブが作りやすいのです。

また鋳造は大量生産に向いているので安価に作りやすいのもメリットです。

デメリットは打感と調整ができないこと

先ほどの鍛造と比べて鋳造は打感が悪く感じる傾向にあります。

それは溶かした金属が冷却されて形にはなりますが、

結晶の大きさも配列もバラバラなため打感に影響するものと考えられます。

また多くの鋳造品はロフト角、ライ角の調整ができません

理由は材質が硬いものを使用することが多いからです。

材質については後に詳しく解説します。

例外として炭素鋼を使用した鋳造品は調整できます。

またピンのアイアンはネック部分を加工することで調整できるようになっています。

鋳造の材質はいろいろ

・SUS630(17-4ステンレス)

・SUS431(431ステンレス)

・AM355P(マレージング鋼)

・SCM440(クロムモリブデン鋼)

SUS(ステンレス)の材質について

「SUS」と書かれたものはステンレスを意味します。

3ケタの数字は200番台、300番台、400番台、600番台で含有されてる金属の種類や量によって区分けされています。

ステンレスの特徴は錆びにくいことです。

英語では「Stainless Steel」(ステンレス・スチール)と書きます。

ステン=錆び、レス=ない、スチール=鉄

直訳すると「錆びない鉄」なので名前の通りの材質です。

理由はクロムという金属が含有されていて、鉄と交わることで表面に薄い膜を作り出し腐食を防いでくれるからです。

ゴルフは雨や池など水に触れることがたくさんありますし、

錆びにくいほうがお手入れも簡単ですね。

マレージング鋼について

AM355Pと呼ばれるものはマレージング鋼と言います。

マレージング鋼は炭素鋼よりも硬く、柔軟性があるので、

金型、航空機、ロケットなど宇宙開発機器にも使われている材質です。

特殊な材質なのでとても高価です。

硬い材質はボールを弾く力が強くなるので飛び系のクラブに使用されることが多いです。

クロムモリブデン鋼について

SCM440(クロムモリブデン鋼)は鉄にクロム、モリブデンなどを混ぜた合金を言います。

高温でも強度を維持でき、柔軟性もあるので工具、自転車のフレーム、自動車に使われています。

溶接や熱処理もしやすく、費用の面でも使いやすいことからアイアンの材質として使われています。

複合型

違う材質を溶接などで組み合わせて作っているもののことです。

重量のバランスを調節するために重たい金属をつけたり、

フェース面を硬い金属、ボディを軟鉄鍛造で打感と飛びの両立を目指して作ったり、

様々な材質のものを複合させてアイアンを作ったものを言います。

メリットは材質の良いところを活かせる

複合型は材質の良いところだけを使い出せるという面です。

マレージング鋼やチタンのように硬い金属はボールを遠くに飛ばすのに

適したものですが、高価で加工が難しいというデメリットがあります。

そのデメリットを無くすために、フェース面だけ硬い金属にして

ボディ部分は加工がしやすいステンレスや炭素鋼にすれば材質の良いところを活かせるアイアンを作ることができます。

デメリットは打感と見た目

複合型は様々な部品を溶接などで接着させて作るので

見た目が肉厚で大きい印象のものが多いです。

またフェース面が硬い材質のものだと、

ドライバーのように高めの打球音がするのもあるので慣れが必要です。

材質も製法もさまざま

・タングステン

・ステンレス

・クロムモリブデン鋼

・チタン

製法も鍛造、鋳造が組み合わせて作られているので

アイアンで使用されている材質はほぼ全て使われています。

その分、材質と製法の組み合わせで何を目的として作られているのか分かり易いです。

タングステンについて

タングステンは比重がとても重たい金属です。

金と同じくらいの比重があります。

10cm角の容器に水を入れた時の重さは1kgですが、

同じ大きさの場合、タングステンは19.3kgもあります。

ちなみに鉄は7.8kgなのでタングステンは約2.5倍も重い事になります。

この比重の違いを利用して、アイアンヘッドの一部にタングステンをつけて

重量バランスを変えることでスイートスポットを広くしたりやさしいクラブに設計しています。

チタンについて

ドライバーのヘッドによく使われている金属なので

聞いたことがある人も多いと思います。

チタンは比重が軽く、とても硬い金属です。

しかし加工するのが難しいのでコストがかかってしまうのが難点です。

アイアンにはフェース面だけに使われることが多いです。

まとめ

・鍛造は加熱した鉄を叩いて作る製法で、打感の良さと角度調整ができる。

・鋳造は溶かした鉄を型に流し込んで作る製法で、自由度の高い形状が作れる。

・複合型は材質の良いところを組み合わせて作られたもの。

・材質や製法を知ることでどんなアイアンなのかが把握できる。

ちょっとマニアックな内容だったので万人受けしないことはわかりながらも書いてみました。

私としてはアイアンも進化を続けていることが分かってもらえるだけでも嬉しいです。